自動運転車が行き交う未来の都市と集合賃貸住宅

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自動運転車、セルフ・ドライビング・カーについては、Googleなどの実験車両などのニュースが流れるなど、関心が高まりつつあります。これが集合賃貸住宅にどのような影響を与えるのかは、マンション・オーナーにとって関心のある事柄です。

外部サイト: Google セルフ・ドライビング・カー プロジェクト

そこで、最近は、自動運転車に関する本が次々と出版されていますので、そのひとつを読んでみました。

外部リンク: Google vs トヨタ 「自動運転車」は始まりにすぎない (角川EPUB選書)

このような本は、今後も、ドンドン増えるでしょう。まだまだ未知の領域な上、社会の基盤となる為には、国際規格の整備が必要となるので、先は長いでしょう。したがって、どのような形となって、自動運転車社会が来るのかは、予断はできません。詳しく書かれているのですが、このような本でも、実際の暮らしにどう影響するのかという具体的場面については、第3章のみにとどまり、踏み込んでは書かれてはいませんでした。

したがって、長期的な視点が必要な賃貸住宅事業にとっては、根底を覆すような大きな影響がありそうなので、自動運転車が登場したらどうなるのか、与太話にしかなりませんが、私見ながら、現時点で考えてみました。

1、すべての車を外部からコントロールするような形でなく、
  個々の車が自律的に走る自動運転車という方式が主流になる限り、
  特に普及初期は、人間の走らせる自動車と混在する以上、
  事故は100%無しですませることはできないでしょう。
  (普及後も、人の飛び出しは性能向上で防げても、
   自転車は人が運転しますので、接触事故は避けられないでしょう。)

  そうなると、特に普及初期は法律も整備されていないでしょうから、
  車の所有者、車の運転車となれば、賠償責任の問題で責任が生じますので、
  多くの個人ユーザーは購入を見送ることが予想されます(乗客なら責任はない)。

  したがって、自動運転車は個人が所有するのではなく、
  タクシー会社のような法人が持つという形が先行するのではないか?
  と考えられます。

  というのは、タクシー会社のように、会社組織として、資金を潤沢に持ち、
  台数をたくさんもっているところなら、法人用の車両保険など活用できるので、
  万が一の損害賠償に耐える能力は、個人よりはずっと高いからです。

2、そして、すでに、Uberのように、単なる配車アプリではないサービスも
  受け入れら始めているので、このまま、この手のサービスが定着すると、
  自動運転タクシーは、このような形態で運用されはじめるのではないか?
  と考えられます。

外部リンク: Uber

3、さらに、重要なことは、
  タクシーの運転手の人件費は、運賃の約6〜7割あるともいわれていますが、それが必要なくなり、
  客室内に宣伝が掲載料も加算できるでしょう。

  つまり、タクシー代は、システム代+燃料代+車両メンテ代+保険料、
  そこから、広告宣伝費を引くという構図になりますので、
  料金自体は、劇的に安くなるのではないか?
  と考えられます。

  過疎地で、バスの運営で困っているような地域では、
  劇的なコスト削減にもなるので、導入が進むでしょう。
  定期でバスを走らせるのはもったいないので、呼び出し制にしている所もありますが、
  このような自動運転タクシーが実現すれば、そういう問題も一挙に解決です。

4、1、2、3の推論がすべて正しいとすれば…ですが、
  普及率がある程度上がった時点で、個人で自家用車を持つ必要性自体が、
  相当低くなるのではないでしょうか?

  いつでも、どこでも、呼べば、すぐに来る自動運転車は、
  利便性において、自家用車と、たいして変わらないからです。

  その上、万が一の事故に対して、賠償責任から解放されれば、なおさらです。

  (また、長時間乗るような時用に、ゴージャス室内バージョンも別途用意されるでしょうから、
   このようなバージョンがいくつかそろえば、それでも個人所有
   というような誘惑にかられることもなくなるでしょう。)

つまり、自動運転車が世の中に普及しだすと、集合賃住宅においては、敷地内駐車場の大半はいらなくなることになります。今まで、郊外型の賃貸物件は、駐車場を100%確保するために、大きな駐車スペースが必要でしたが、その必要がなくなるわけです。

ということは、今まで駐車場に使っていた分を節約し、建蔽率をいっぱいにした建物を建てられますから、さらに人口密度を高くして住めることにもなりますし、自家用車の駐車スペースもいらなくなり、カーシェアリング状態になりますので、人口あたりの必要台数も減り、月極駐車場としているようなスペースもいらなくなるでしょう(今や、建物は建蔽率というよりも、日影規制で制約されていますが、ここでは考えていません)。

そうなると、さらに土地への需要は少なくなり、土地の価格はさらに下がるでしょう。

つまり、自動運転車の時代の到来は、不動産賃貸事業に対しては、今までよりもデフレ傾向を強める影響を及ぼす、のではないかと思いました。

なお、この問題は、都市のもうひとつの関係者である行政からの視点でも考えておく必要があるでしょう。

実は、行政としては、都市部に集中して住んでもらいたいはずです。というのは、上下水道等インフラ整備のメインテナンス費用を抑えるためには、集中して住んでもらうほうがコストは少ないはずだからです。

したがって、今後は、郊外へ広がって住むようなことに規制をかけようとする政策的な動機が強くなると思われます。その上、地方自治体の税収問題(固定資産税の問題)も絡みます。

固定資産税をかける為の評価基準は、基本的には、市の中央部から幹線道路を通じて傾斜的値付けされています(もう少し細かくいうと、国税局の使用する財産評価額=路線価の8〜9割程度にしている。この路線価は中心部から大通りへというような価格を形成する形になっている)。

ですから、自動運転車によって、仮に、どこに住んでも利便性は一緒、したがって土地の価値も一緒という事態になれば、この体系は維持できなくなります。これは、不動産の価格付けにとって一番重要な要素である、希少性による付加価値が通用しないということを意味します。中央部だから便利、便利な土地は皆が欲しい。このような付加価値が認められなければ、市の中心部の土地の価格は、実際の取引価格では今より暴落してしまう(行政の政策が固定的なら、土地の実売価格は下がるのに、固定資産税の評価額だけが高止まるという)ことになります。

このような税制に潜むゆがみも、デフレ傾向を強める影響を及ぼす一因になるのではないでしょうか?

マスコミの報道では、その問題点が大きく論じられることはありませんが、実は、固定資産税という税は、やっかいな問題をいくつか抱えている税です。しかも、地方自治体にとっては、固定資産税というのは、大事な財源です。ですので、いじりたくない・手をつけたくないというのが本音ではないかと思われます。

例えば、企業会計では残価10%(今は1%)ですが、固定資産税では残価を20%とし、末長く税が取れるように設計されています。いろいろな解釈があるとは思いますが、仮にこれはおかしいと指摘されて、それを直せば、ただちに、課税価格が20%近く下がってしまう=税収が減ってしまいます。行政からすれば税収が減るのは、どんな原因であれ、避けたいのではないでしょうか。

過去、バブル崩壊時にも、固定資産税を弾力的に下げるようなこともしていません。固定資産税は総務省の問題ですが、登記の変更の際に貼る印紙税は固定資産税評価額を基にしていますので印紙税収入=財務省にも影響を与え、各省庁にまたがる問題になりあります。そうなると、こういった問題は、すぐにやろう!などということにはならないのでしょう。この手の問題を改革するのは、誰でも、抵抗感は強いと思います。

ですので、これら、今後のインフラ整備費や、改革に着手するにはやっかいな固定資産税の問題を考えると、インフラ整備コストが安くなる方向として、なるべく中心部へ人を集めるということ、そして中心部へ向かって土地の価値が高くなっているということ、この2点が維持されるように、自動運転車社会を導こうとする政策立案・行政運営が行われるのではないかと思われます。

自動運転車と競合する立場にあるのは、鉄道輸送とバス輸送でしょう。このうち、バス輸送はゼロサムゲーム的にシェアのとりあいになるでしょうから、共存するのは鉄道輸送でしょう。その鉄道輸送ですが、静岡市(中部地方)における輸送分担率は、5%程度です。これは、東京圏では25%程度と比べて、当然、低い割合です。

このように鉄道インフラが十分でない地方都市=車社会の都市でも、自動運転車が交通インフラの主流になった時に問題となるのは、やはり、中心部への車の交通集中問題でしょうが、これが発生しないようにできるのであれば、行政は何もしなくても、今の風景が維持されつつ、徐々に自動運転車に切り替わっていく、ということになるのではないでしょうか。

外部サイト: 都市交通調査

なお、生産緑地を減らす、宅地並み課税を維持するなどで、郊外の隅々まで宅地を広げようとする政策の維持が、もう一方で進行しています。この方向に進んだ場合、自治体の固定資産税はそれなりに維持されるものの、中心部は人口減少による空家が点在は放置されたまま、郊外は宅地開発が行われるものの人口減少で買い手がつかない新古空家が点在するということになりかねません。おそらく、地方自治体では何も決められないので、そういう事態の進行を放置する可能性も充分にあります。この場合、不動産市場には、もっとデフレ圧力がかかるということになります。

以上、与太話でした。

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